「大車輪」と聞いて、鉄棒でぐるぐる回るあの技を思い浮かべた方もいるかもしれません。
ところが、かつての消費者金融の世界では、この言葉は借金の利息をぐっと抑える回し方を指していました。
今はもう通用しない過去の話ですが、当時これは「神」とまで呼ばれた方法だったのです。
大車輪は無利息を回し続けて利息を削る方法だった
大車輪はサービスの正式名称ではなく、ネット上で自然と広まった呼び名です。
核にあったのは、シンキが運営していた「ノーローン」の無利息キャッシングでした。
この手法はローンパークのコラム「ノーローンの大車輪」出典でも取り上げられており土台となる無利息の中身から順に見ていくと、なぜこれほど効いたのかが分かってきます。
リンク先のコラムは当時の状況についても触れられており、今の状況との違いも見ることができます。
完済すれば何度でも1週間無利息だった
ノーローンの無利息キャッシングは、平成8年に業界で初めて登場したものです。
借入日から7日以内に返し切れば、その分の利息はかかりません。
しかも当時は、完済するたびにこの1週間無利息が何度でもよみがえったため、借りて、返して、また借りるを繰り返すだけで、利息をほとんど払わずに済んだわけです。
借りて返してを他社とつなぐ
ここで疑問がわきます。
ノーローン1社で借りているだけなら、それのどこが「車輪」なのか、という点です。
当時は過剰な貸し付けが当たり前で、何社も掛け持ちしている人が珍しくありませんでした。
その複数の借金を、ノーローンの無利息を軸にぐるぐる回すからこそ大車輪と呼ばれたと考えられます。
たとえばA社に30万円の借金があるとすると、回し方はこんな流れです。
- ノーローンで30万円を借り、その場でA社を完済する
- 1週間後、身軽になったA社から再び30万円を借り、ノーローンを完済する
- その翌日、ノーローンでまた30万円を借り、A社を完済する
- 1の状態に戻り、同じ流れをぐるぐる繰り返す
ノーローンは完済後の1週間が無利息なので、この一巡で利息が乗るのは、主に手順2から3のあいだにA社で発生する1日分ほどです。
借入と返済のタイミング次第で他にも少し利息がつくため、理屈のうえでは8分の1でも、現実にはもう少しかかることが多かったようです。
それでも削減幅は破格でした。
手間はかかっても年28%が実質3.5%相当に
大車輪の効き目は、数字にすると一気に分かりやすくなります。
手数料などを脇に置いた計算では利息を理論上8分の1まで圧縮できたため、削減効果はそれほど大きかったのです。
とはいえ、うまい話には裏側もありました。
削減できても借金そのものは減らない
仮に年率28.0%で借りていたお金を大車輪で回すと、利息の負担は年率3.5%相当まで下がる計算になります。
今のカードローンでも、この低さで借りるのはまず無理な水準です。
ただし、抑えられるのはあくまで利息だけで元金は1円も減らず、現状維持のまま利息を薄くしているにすぎないので、給料日や臨時収入のたびに自己資金を少し足して返し、元金そのものを削っていくのが理想でした。
1万円でも2万円でも、乗せた分だけ完済は早まります。
慣れが破綻を招いた
理屈のうえでは無敵に見える大車輪ですが、自分の手で崩してしまう人が後を絶ちませんでした。
最初はきっちり回していても、慣れてくると「少しだけなら」と、借りたお金の一部を返済に回さず別のことに使ってしまうのです。
30万円を返すはずが25万円だけ返して残る5万円に手をつけるなど、すぐ戻せると思っての行動ですが、本当にすぐ戻せる余力があるなら、そもそもここまで借金は膨らみません。
借金で借金を回す仕組みは、一度の抜け穴であっけなく破綻します。
あとに残るのは、重い返済を続けるか、債務整理へ進むかという道だけでした。
今の無利息サービスと大車輪が消えた理由
これだけ利用者に有利だと、貸す側の立場では割に合いません。
無利息で貸しているのに焦げ付くおそれだけ大きく、得られる利息は少なすぎる歪みが、大車輪の寿命を縮めることになりました。
完済の翌月以降しか無利息が戻らなくなった
ノーローンはサービス内容を見直し、大車輪の回し方を封じました。
今も「何度でも1週間無利息」という看板は残っていますが、無利息が適用されるのは完済日の翌月以降に変わっています。
完済してすぐ借り直しても以前のように無利息は復活せず、大車輪はほぼ成立しなくなりました。
現在の無利息は初回借入が中心
今どきの無利息サービスも、多くは初回契約の初回借入だけが対象です。
かつてのノーローンと今とを並べると、違いがはっきりします。
| 項目 | かつてのノーローン | 今の一般的な無利息 |
| 無利息の回数 | 完済のたびに何度でも | 初回のみが中心 |
| 無利息の復活 | 完済後すぐ | ノーローンは完済の翌月以降 |
| 大車輪の可否 | 回せた | 回せない |
大車輪が消えた今の環境を、物足りなく感じるかもしれません。
ただ、当時の消費者金融は利息がはるかに高く、少しでも返済が遅れれば厳しい取り立てが続くのが日常でした。
それを思えば、上限金利も総量規制も整った今のほうが、まだ落ち着いて向き合えます。
なお、ノーローン自体は現在、新規と再契約の受付を止めており、SBI新生銀行グループではレイクなどが借り入れの窓口になっています。